映画の卒業についてお探しですね。
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映画『卒業』のラストシーン、なぜ二人の笑顔は消えたのか?
1967年に公開された映画『卒業』は、今から50年以上も前の作品なのに、今でも多くの人に愛されている名作です。
花嫁を結婚式場から連れ去るシーンと、その後のバスの中での「あのラストシーン」は、あまりにも有名で、たくさんのパロディが作られてきました。
でも、バスの中で二人の笑顔がスーッと消えていくあの場面には、ただのハッピーエンドじゃない、もっと深い意味が隠されているんです。
この記事では、映画のストーリーをおさらいしながら、あの伝説的なラストシーンが何を伝えようとしていたのか、詳しく見ていきたいと思います。
『卒業』ってどんな話?あらすじをおさらい
主人公のベンジャミン(演じるのはダスティン・ホフマン)は、東部の有名大学を優秀な成績で卒業して、ロサンゼルスの実家に帰ってきます。
両親は息子の帰郷を盛大なパーティーで祝うのですが、ベンジャミン本人は全然嬉しくありません。
「これから自分はどう生きていけばいいんだろう」という漠然とした不安と、親が決めたエリートコースを歩くことへの虚しさでいっぱいなんです。
そんなモヤモヤした日々の中、父親のビジネスパートナーの奥さん、ミセス・ロビンソン(アン・バンクロフト)に誘惑されて、なんと関係を持ってしまいます。
毎日のようにホテルで会う二人でしたが、そこに愛なんてものはありません。
ただお互いの心の空っぽな部分を埋め合うだけの、退屈な関係が続いていきます。
ところが、ミセス・ロビンソンの娘・エレイン(キャサリン・ロス)が大学から帰ってきたことで、状況は一変します。
親に言われて仕方なくエレインとデートしたベンジャミンでしたが、彼女の純粋さに触れるうちに、本気で恋に落ちてしまうんです。
でも、母親との関係がバレてしまい、エレインは怒って別の男性と結婚しようとします。
ベンジャミンは結婚式が行われている教会に駆けつけ、ガラス越しに「エレイン!」と叫びます。
二人は周りの人たちを振り切って教会から逃げ出し、たまたま通りかかったバスに飛び乗って――そして、あの有名なラストシーンへとつながっていくのです。
登場人物の気持ちと1960年代のアメリカ
この映画をちゃんと理解するには、1960年代後半のアメリカがどんな時代だったかを知っておく必要があります。
当時はベトナム戦争が泥沼化していて、若者たちの間では「大人たちが作った社会っておかしくない?」という反発の気持ちがすごく強かった時期でした。
ベンジャミンが感じている「このままでいいのかな」という不安や、物質的に豊かな親世代への違和感は、当時の若者たちがみんな感じていたリアルな感情だったんです。
彼がミセス・ロビンソンとの関係にハマっていったのも、親の世代が作った偽善的な社会への、彼なりの反抗だったと言えるかもしれません。
やる気がないように見えて、実は無意識に抵抗していたんですね。
一方、ミセス・ロビンソンも複雑な人物です。
お金持ちの奥さんとして何不自由ない暮らしをしているように見えますが、実は若い頃に妊娠したことで愛のない結婚を強いられ、自分の夢も青春も犠牲にしてきた人なんです。
彼女がベンジャミンを誘惑したのは、自分が失ってしまった「輝いていた若さ」を彼の中に見つけて、それを手に入れたかったから。
単純な欲望じゃなくて、もっと深い絶望から来ている行動だったんですね。
あのラストシーン、本当の意味は?
結婚式場から逃げ出して、バスの一番後ろの席に座った二人は、最初は息を切らしながらも笑顔でいっぱいです。
困難を乗り越えて愛を貫いた!という達成感があるんでしょう。
でも、バスが走り出して少し時間が経つと、二人の顔から笑顔が消えていって、なんとも言えない不安そうな表情に変わっていきます。
この表情の変化こそが、『卒業』をただの恋愛映画じゃなく、映画史に残る名作にした最大のポイントなんです。
二人は「親や周りの人たちのしがらみから逃げる」という目的は達成しました。
でもその直後に、「じゃあ、これからどうするの?」という現実に直面してしまったんです。
お金もない、計画もない、もう後戻りもできない――。
マイク・ニコルズ監督は、このシーンを撮るとき、わざとカットの声をかけずにカメラを回し続けたと言われています。
俳優たちが演技モードから素に戻っていく瞬間を捉えたかったんですね。
あそこに映っているのは、自由を手に入れた代わりに、ものすごい孤独も背負うことになった若者の姿です。
恋愛の勢いだけで結婚式をぶち壊した二人が、これからどうなるのか分からない未来へと運ばれていく――。
親からは「卒業」できたけど、同時に、責任という名の厳しい大人の世界に「入学」してしまった瞬間でもあったんです。
演出の工夫と忘れられない音楽
教会から逃げるシーンにも、すごく象徴的な演出があります。
ベンジャミンは花嫁を連れて逃げるとき、教会にあった大きな十字架を振り回して大人たちを追い払い、最後はその十字架をドアに挟んで外から閉じ込めてしまうんです。
これって、キリスト教という伝統的な権威や、古い世代が押し付けてくる価値観そのものを閉じ込めて、決別するっていう強烈なメッセージなんですよね。
1960年代の若者文化の精神が、これ以上ないくらいカッコよく映像化されたシーンです。
そして、この映画を語る上で絶対に外せないのが、サイモン&ガーファンクルの名曲『サウンド・オブ・サイレンス』です。
映画の最初、ベンジャミンが空港の動く歩道に乗って無表情で進んでいくシーンと、ラストのバスで二人が黙り込むシーン、両方でこの曲が流れます。
– 孤独や寂しさを感じさせる、どこか切ないメロディ
– 主人公の心の中を代弁するような歌詞
– 物語の始まりと終わりを同じ曲でつなぐことで、「結局元の場所に戻ってきたのかも」と思わせる効果
この音楽の使い方のおかげで、観客は「ベンジャミンは本当に変われたのかな?」という複雑な気持ちを抱えながら、映画館を後にすることになります。
映画『卒業』が今でも語り継がれているのは、すばらしい脚本や俳優の演技だけじゃなく、演出と音楽が完璧なバランスで組み合わさっているからなんですね。
時代を超えて愛される、本物の名作です。
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