斉藤由貴の卒業についてお探しですね。

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春になると聴きたくなる、斉藤由貴『卒業』の魅力

春が近づくと、街のあちこちで卒業ソングが流れてきますよね。

数ある名曲の中でも、1985年に発売された斉藤由貴さんのデビュー曲『卒業』は、今も色あせない輝きを放っています。

普通の卒業ソングとは違って、ちょっと冷めた感じの女の子の目線で描かれたこの曲は、当時の音楽シーンに大きな衝撃を与えました。

この記事では、作詞家の松本隆さんが作った『卒業』の歌詞の魅力と、この曲が生まれた時代背景について紹介します。

さらに、同じ作家コンビが手がけた名曲『木綿のハンカチーフ』とのつながりについても見ていきましょう。

他の卒業ソングとは一味違う『卒業』の世界

斉藤由貴さんの『卒業』の一番の魅力は、これまでの卒業ソングにはなかった「ちょっと変わった主人公」が登場することです。

それまでの卒業ソングといえば、友達との別れを惜しんだり、先生に感謝したり、涙を流したりする場面を歌うものがほとんどでした。

でも、作詞家の松本隆さんがこの曲で描いたのは、周りの盛り上がりから一歩引いて、どこか冷めた目で見ている女の子の姿なんです。

たとえば、卒業式でよくある「制服のボタンを下級生にねだられる」という青春のワンシーン。

普通なら感動的に描きそうなところを、主人公は「ああ そうね」と気だるそうに返事をします。

泣いたり騒いだりせず、淡々と受け流すこの感じが、聴いている人に強い印象を残します。

本当は寂しいのに我慢しているのか、それとも本当に何も感じていないのか。

そのあいまいさが、聴く人の想像をかき立てるんですね。

また、松本隆さんならではの映像が浮かぶような繊細な描写も、この曲を名曲にしている大きなポイントです。

言葉選びひとつひとつが、思春期特有の揺れ動く複雑な気持ちを見事に表現しています。

「悲しい」「寂しい」といった直接的な言葉を使わずに、情景と主人公の行動だけで心の中を伝える手法は、さすが松本隆さんと言えるでしょう。

そこに斉藤由貴さんの透明感がありながらもどこか憂いを帯びた歌声が重なって、歌詞の世界が完璧に完成されています。

1985年という時代が生んだ「異色」のアイドル

『卒業』が発売された1985年は、日本のアイドル界にとって大きな転換点でした。

この年は、おニャン子クラブが結成されて、素人っぽさや親しみやすさを前面に出した新しいアイドルのスタイルが大ブームになった年でもあります。

また、松田聖子さんや中森明菜さんといったトップアイドルたちが、それぞれ独自の路線で活躍していた華やかな時代でもありました。

そんなアイドル戦国時代にデビューした斉藤由貴さんは、明らかに他とは違う存在感を放っていました。

キラキラした衣装で笑顔いっぱいに歌う従来のアイドルとは違って、清楚なセーラー服姿で、どこか憂いを秘めた表情で歌う彼女の姿は、当時の若者たちに新鮮な驚きを与えたんです。

『卒業』の歌詞に出てくる、周りの盛り上がりから少し距離を置く主人公の姿は、斉藤由貴さん本人のミステリアスな雰囲気とぴったり重なっていました。

さらに、当時は「女性の生き方の多様化」が少しずつ進み始めていた時代でもありました。

ただ男性を待って尽くすだけじゃない、自分の意志を持った女性像が社会に受け入れられつつあったんです。

『卒業』の主人公が持つ、感傷に浸りきらない強さや冷静さは、そうした新しい時代の空気を反映していたのかもしれません。

バブル経済に向かって浮き足立っていた社会の中で、この曲が放つ静かな冷たさは、かえって多くの人の心に深く刺さったのです。

名曲『木綿のハンカチーフ』とのつながり

斉藤由貴さんの『卒業』をじっくり聴くと、太田裕美さんの大ヒット曲『木綿のハンカチーフ』(1975年)を思い浮かべる人も多いんです。

それもそのはず、両方とも「作詞:松本隆、作曲:筒美京平」という、昭和歌謡を代表する黄金コンビが作った曲だからです。

発売された時期は10年も違いますが、テーマや世界観にはとても興味深い共通点があります。

**二つの曲の共通点**
– 都会へ旅立つ男性と、故郷に残る女性の対比
– 変わっていく相手を冷静に見つめる女性の視点
– 情景描写で心の動きを表現する松本隆さんの手法

『木綿のハンカチーフ』では、都会に染まっていく恋人に対して、最後に「涙を拭く木綿のハンカチーフ」をねだる女性の切なさが描かれています。

一方、『卒業』でも、東京へ旅立っていく同級生(もしかしたら好きな人)を見送る主人公の姿が描かれています。

どちらの曲も「上京と別れ」という日本人の心に響く普遍的なテーマを扱いながら、女性側がどこか一歩引いた視点で、変わっていく(または離れていく)男性を静かに見つめている点が共通しているんです。

でも、10年の時間は女性像に明らかな変化をもたらしました。

『木綿のハンカチーフ』の主人公が純粋で悲劇的なヒロインだったのに対し、『卒業』の主人公は「離れてしまえば心も離れる」という現実を最初から分かっているような諦めを持っています。

この二つの曲を続けて聴くと、松本隆さんが描く「別れを受け入れる女性像」の変化と、昭和50年代から60年代にかけての日本社会の価値観の変化を、はっきりと感じ取ることができます。

今も愛され続ける『卒業』の普遍的なメッセージ

発売から何十年も経った今でも、斉藤由貴さんの『卒業』は色あせることなく、多くの人に愛され、いろんなアーティストにカバーされ続けています。

その理由は、この曲が単なる昔のヒット曲ではなく、人間の本質的な感情を捉えた普遍性を持っているからなんです。

私たちが人生の中で経験する「卒業」や「別れ」は、必ずしも美しい涙や感動だけで彩られているわけじゃありません。

時には実感が湧かなかったり、周りの盛り上がりについていけなかったり、無意識に感情にフタをしてしまったりすることもあるでしょう。

『卒業』の歌詞は、そうした「うまく言葉にできない複雑な気持ち」や「素直に泣けない不器用さ」を肯定して、そっと寄り添ってくれる優しさを持っています。

だからこそ、青春真っ只中の若者だけでなく、かつてその季節を通り過ぎた大人たちの心にも、懐かしさと共に深く響き続けるんです。

また、筒美京平さんが手がけた、クラシック音楽の要素を感じさせる上品なメロディも、この曲の魅力を支える大きな要素です。

切なさを感じさせながらもポップスとしての親しみやすさを失わない丁寧な音作りが、松本隆さんの文学的な歌詞を最も美しい形で届けてくれます。

斉藤由貴さんの『卒業』は、歌詞、メロディ、そして歌い手の個性が奇跡的なバランスで融合した、日本のポップス史に残る傑作です。

これからも春が来るたびに、この曲に込められた静かな熱さと冷静な視点は、新しい世代の人たちの心を捉えて離さないでしょう。

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